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こんばんわ!
12/11週の展望です。

◾️ファンダメンタルズ観点の展望
・植田総裁の発言により、YCCの早期解除が警戒された。
・日本の早期YCC解除論と、アメリカの早期利下げ論を受け、大きく円が買われる展開になっている。
・しかし、早期YCC解除はしない可能性が高く、アメリカにおいても雇用統計により早期利下げ論は否定気味。
・よって、市場認識がずれていると認知された場合は、円安圧力が復活する可能性がある。


 先週のドル円は更に下落。特に木曜日は植田総裁の発言を受け、今年一大きな下落を見せました。


 日本については上記に記載している通り、植田総裁の意味深な発言が世界的に注目を浴び、大きな円買いへと繋がりました。その発言内容は「チャレンジングな状況が続いているが、年末から来年にかけて一段とチャレンジングな状況になる」ということでした。

   ※引用:ロイター(画像クリックで記事にアクセス)



 これは言葉通りに捉えるのならば、何かしらの政策変更を実施する可能性がある、ということになります。わざわざ「年末から年始にかけて一段と」と具体的な時期を発言するあたり、何か行動をしますよ、と宣言をしているようなものです。今年9月には今回と同様に、年末というワードを使用し今後の展望を語ったことで、12月の政策金利決定会合あたりでYCCを解除すると捉えられた経緯があります。その際も大きく円高方向に動きましたが、後々、植田総裁が会見を開き、意図と違う伝わり方をしたと弁明をしています。そういった経緯がありますので、その時と同様の発言をした場合、相場がどのような反応をするかはよく理解していたと考えられます。

 仮に、何かしらの政策変更があるのではないか?と、相場に強い期待感を抱かせてしまうことを承知の上で、今回の発言をしたのだと仮定すると、その思惑は2通りあるのではないかと推察します。

 1つ目は、年末、年始の政策金利決定会合にて、本当に何かしらの政策変更をするパターンです。その場合は、ショックを緩和する意図が考えられます。いきなり政策変更を打ち出すと、もちろん為替市場もですが、株式市場、債券市場等、ひいては経済全体に多大なショックを与えてしまう可能性があります。当然ながら金利も大きく上昇するでしょうし、デフレ脱却に向けて大きな足枷となってしまいます。よって、まずは匂わせておくことで市場にある程度織り込ませ、ショックを緩和する事を目的的として発言をした可能性があります。

 2つ目は、今回は何もしないが来年度にはYCCを解除することができる目処が立ってきている為、その旨をある程度匂わせておくパターンです。これまでの植田総裁の考え方から察するに2つ目のパターンの方が有力だと思いますが、こちらも1つ目と同じくショックを緩和する意図があります。来年度中にYCCを解除できる目処が立ってきている為、相場に少しずつ織り込ませたかったのかもしれません。

 植田総裁はここまでかなり慎重に進めてきている為、突然、年末年始にYCC解除といった大きな政策変更を実施するとは思えません。直近に発表された日銀の報告書においても、物価安定に向けて粘り強く緩和を続けるといった内容が記載されていました。そのレビューがわずか1日でひっくり返るとは思えません。しかし、今回の発言でドル円が6円ほど動いた事を考えると、やはり為替市場において日本のYCC継続有無というのは大きな関心事項になっていると言えます。それ故、慎重派の植田総裁としては緩衝的な作用を期待して今回の発言をしたのではないか?と考えています。

   ※引用:日本銀行(画像クリックで記事にアクセス)



 ただ、海外トレーダー、証券会社は当然、YCC解除等の政策変更を期待したと思います。その為、もし12月の政策金利決定会合、或いはその前に実は何も変更しません、という趣旨の発言が出た場合は、大きく円安方向に戻る可能性があります。現状では円高方向への圧力が高まっていますが、そういった発言一つで流れが大きく変わる可能性がありますので、要注意かなと考えています。


 アメリカについては、先週、雇用統計の発表がありました。水曜日のADP雇用統計と逆の結果が出ることが多いと言われていましたが、その通りの結果となりました。結果としては、平均時給、雇用者数共に市場予想を上回り、労働市場の強さが示されました。この結果はFOMCにおける早期利下げ論を否定する格好となっています。


 その結果、アメリカ長期金利は4.1%から4.2%超まで上昇しています。今回の雇用統計については、全米自動車労組合関連の件により、賃上げや雇用が上向いている事が主な要因と言われていますが、トヨタやホンダ、日産といった日系企業も来月に同様の大きな賃上げを実施することになっています。裾野が広い自動車産業の賃上げは大きな影響を及ぼすと考えられます。

 今回の強い雇用統計結果や、自動車産業のような賃上げムードが続いている背景を考慮すると、FRBとしてはまだ利下げの決断はできないと考えられます。現状、来年早々に利下げする可能性があるといった考え方が広がっており、それ故、長期金利も下落してきていました。しかし、利下げはまだ先の話だと認識されれば、長期金利は再び上昇する可能性があります。

   アメリカ10年債 長期金利 ※引用:楽天証券



 今週はCPI発表及び、FOMCが実施されます。上記を考慮すると、今回も政策金利は据え置きとなる可能性が高いです。会見の場にて、パウエルが鳩派寄りの発言(近々、利下げする可能性がある等)をした場合は、長期金利が下落すると思われます。しかし、インフレの再燃を未然防止する事が重要だと思われますので、中立的な発言をするか、或いは鷹派寄りの発言をする可能性が高いです。もちろん、CPIが余程弱ければ話は別ですが、雇用統計が強い以上、CPIも弱くはないでしょう。よって、早期利下げ論によってここのところはドル売りが強まっていましたが、早期利下げをしないのであればドル売り傾向は一旦、止まる可能性があります。


 その他の国々については特に大きな変化や、経済指標は無し。アメリカと同じく早期利下げ論が主流となっています。EU圏では年始あたりから利下げが始まると予想されています。その通りに事が運ぶのであれば、円のキャリートレードの終焉が近づき、円高傾向が強まると考えられます。しかし、少々、利下げ論が強まり過ぎている印象を受けますので、もし強めの経済指標が出た場合は、金利の上昇かつ、円安傾向が強まる可能性がある為、要注意かなと思います。

   EU10年債 長期金利 ※引用:楽天証券



 暫くは不動と思われていた日銀が動きを見せた事で、クロス円通貨は大荒れの状況です。それだけ日銀のYCC解除有無が警戒されているのでしょう。しかし、早期YCC解除が織り込まれ過ぎている感がありますので、そうで無いとなった場合は一気に戻る可能性も考えられます。また、次週はアメリカ、EU圏にて政策金利発表の場がありますので、そこに併せて動きは小さくなっていく可能性がありそうです。

今週の重要材料はこちら!



◾️テクニカル観点の展望
・4時間足は戻り売りが基本路線だが、そのまま上昇を続けるパターンには警戒。
・日足も下落転換したことで戻り売りが基本路線。
・週足レベルでも上昇が終わった可能性がある。
・テクニカル的には下落要素が揃っているが、ファンダメンタルズ面による急激的な動きに注意。


 先週のドル円は週初めは騙しが多く、保ち合い気味となっていました。しかし、木曜日の下抜けから下落開始。植田総裁の発言も加わり、大きな下落となりました。

 4時間足レベルでは、アセンディングトライアングルをブレイクし下落。結果的に戻り高値からの下落が継続しました。しかし、見て分かる通り下落前には髭を連発。非常に騙しが多く、やり辛い相場となっていました。しかし、テクニカル的なブレイクに加え、ファンダメンタルズ的な後押しを受けて、数円レベルの下落に。その後はフラッシュクラッシュ気味の展開を経て、大きな髭をつけた反発。感覚的には、セリングクライマックスを経て下落が終了した印象を受けます。これを3波動目(安値更新継続)と捉えるのか、5波動目(下落終焉)と捉えるのかは結果次第なので分かりませんが、まずは戻り高値をつけて下落するのかを見る必要がありそうです。下落幅に対して6割ほど戻していますので、再び下落開始するのならば、このあたりから+1円程度の範囲が高値の限界値だと思われます。逆に、このまま上昇を続け、147.5円あたりの前回高値を超える場合は、そのまま上昇を続ける可能性がある為、要注意かなと考えています。


 日足レベルでは、今年の3月以来の転換となりました。随分と長い上昇トレンドでしたが、転換の場面は短期足でもよく見られる典型的な下落転換のかたちです。MA100も上から包み込むような形になりかけており、近づいていったとしても跳ね返される可能性が高いです。一旦はセリングクライマックスから上昇しそうな場面ですが、テクニカル的には戻り高値を経て下落する可能性が高そうです。ただし、どこまで戻るかは分かりません。


 週足的にも大きな下落が続いている事が見て取れます。もちろん、まだ上昇トレンドの範疇ではありますが、チャネルの上辺に達し、下落を開始したと捉えるのが妥当かと思われます。感覚的には昨年11月からの大きな下落に似ていますが、チャネルの下辺を抜けた場合は110~120円あたりまで下落する可能性がありそうです。しかし、それはまだ先の話になりそうです。


 先週から引き続き、下落が続いていますし、長期足においても下落傾向が強まっています。よって、長い目で見た場合は下落トレンドが継続する可能性が高そうです。しかし、短期間で大きく下落し過ぎた事、またファンダメンタルズ要素も考慮すると、短期的にはある程度の上昇も考えられるので要注意です。

 それでは今週もがんばりましょう!

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