6/17週の展望です。
◾️ファンダメンタルズ観点の展望
・日銀は国債買入減額を示唆。来月会合にて方針を示す。
・上記方針を打ち出すことで円安に歯止めをかける狙いがあるが、もし次回会合時に変化無しだった場合は円安になる可能性大。
・アメリカはCPIが想定を下回ったことで長期金利が下落。
・ユーロ圏ではフランスの極右政党が優勢となっており、ブレクジットへの懸念から長期金利が下落。
先週のドル円はCPIで下落したものの、結局行って来い。日銀政策金利決定会合後はさらに円安が続いています。
先週は、注目の日銀政策金利決定会合及び、金融政策発表がありました。今回も事前に国債買入額の減額といったリークがありましたが、結果は報道の通り。植田総裁は長期国債買入を減額していく方針を発表。また、次回の会合にて今後の具体的減額プランを決定すると発表しました。しかし、事前のリークのおかげで今回会合にて国債買入額の減額をすると期待が高まっていたため、発表後は大きく円安となりました。
※引用:Bloomberg(画像クリックで記事にアクセス)
その状況を受けてなのか、或いは前回の会見(植田総裁の発言を受けて大幅な円安になった)からの反省なのかわかりませんが、円安にならないような慎重な言葉選びをしているなという印象を受けました。特に会見における「減額をする以上、相応の規模になる」「短期金利を引き上げることは当然、ある」「円安は物価の上振れ要因であり、中止している」という発言を受け、ドル円は下落。円買いが進みました。
※引用:ロイター(画像クリックで記事にアクセス)
個人的には利上げはしない(できない)のではないかと考えています。利上げできない理由に関してはさまざまな説が取り立たされていますが、利上げをした場合は各方面からの反発が大きくなることが想定されるため、利上げはしたいが、利上げすることができないというのが、植田総裁の本音なのではないかと考えています。しかし、何もしなかった場合、それはそれで批判を浴びますし、何より円安が進みます。そのため、国際買入額の減額を行う方針を示すことで、長期金利の上昇への許容姿勢を示すとともに、円安への歯止めをかけたかったのではないかと考えています(利上げという手段で円安への歯止めをかけたくない)。
しかし、こういった発言をした以上、日銀は実際に国債買入金額についてそれ相応の減額を行う必要があります。会見後に円高に進んだあたり、市場は半信半疑ながらも既に織り込み始めています。よって、仮に来月会合で具体的なプランが出てこない、或いは減額するものの微妙な額だった、といった状況になれば、再び強い円安トレンドが戻って来る可能性が高いです。もちろん、アメリカやユーロといった海外情勢が変化したことで円高になった場合、減額すらしない可能性もあります。ただ、ここ1年間アメリカの利下げに期待し続け、日銀が方針を変えなかったことで過度に円安が進んでしまっている為、日銀は海外に期待せずに動いた方が良いのではないかと、個人的には考えています。
アメリカではCPIの発表及び、FOMCが実施されました。CPIは想定を下回った為、長期金利が下落。また、政策金利は据え置きでしたが、FOMC後の会見後にさらに長期金利が下落。年内に1回の利下げを見込んでいるというパウエル議長の発言が長期金利の下落を誘ったようです。
おそらく、理由はCPIの下振れと、ユーロ圏における長期金利下落の影響。アメリカ国内では、今回のCPIの相対に対する下振れ結果を受け、年内のCPIは想定より下ぶれる傾向にあるといった憶測が広まっているようです。年内一回の利下げというのは織り込み済みですし、むしろ0回予想すらありました。よって、CPIの下落及び、1回の利下げは見込んでいるというパウエル議長の発言を受け、利下げ回数は最低1回、ないしは2回といった楽観論が広がり、長期金利が下落したのではないかと考えています。
注目の利下げ開始時期については、9月予想が多いです。CPIが3%を超えている時点で来月からの利下げは考えづらいです。よって、今後の長期金利についてはこの利下げ時期が9月のまま据え置かれるか、或いは後ろ倒しになるかで変化することになりそうです。そのため、今後の雇用統計やCPIといった重要経済指標において、少しでも上振れるようなことがあれば、大幅に長期金利が上昇する可能性があります。逆に、想定を下回る、或いは緩やかな下落傾向が見られた場合は、長期金利が下落する可能性が高そうです。
※引用:Bloomberg(画像クリックで記事にアクセス)
ユーロ圏においては、フランスの極右政党であるバルデラ党首が勝利したことで、大きく長期金利が下落しています。バルデラ党首は移民やユーロ圏に対して否定的であるため、仮に勝利した場合はユーロ圏を離脱するのではないかといった憶測が広がっています。もしフランスがユーロから離脱した場合、ユーロ圏の経済負担はドイツに偏ることが予想されるため、連鎖的にドイツもいずれはユーロを離脱するのではないかと言われています。その場合、ユーロ圏は実質的崩壊を迎えたようなものなのです。フランスのユーロ離脱から始まる、将来的なユーロ経済圏への不安視から、ユーロの長期金利は下落している状況です。
EU10年債 ※引用:楽天証券
フランス国内における移民への不満の高まりもありますし、個人的にはバルデラ氏が党首に選出される可能性は十分あるのではないかと考えています。ただ、その場合は上記で述べた通り、ユーロ圏は実質的な崩壊を迎える可能性があります。よって、反対する勢力も大きいと思います。そのため、ユーロ圏の長期金利については、フランスの選挙状況が今後は大きく関わってくるかなと考えています。
纏めると、日銀は国債買入額の減額方針を発表しましたが、具体的プランはまだ打ち出していません。為替は長期金利上昇への期待感から円高へと動きましたが、減額が微妙な数値だった場合は再び円安圧力が高まりそうです。アメリカにおいてはCPIが下振れたことで長期金利が下落。利下げに対して楽観論が広まってる状況です。ユーロにおいてはフランスのブレクジット問題によって長期金利が大きく下落。今後はフランス国内の選挙が重要になりそうです。
以上を考慮すると、ファンダメンタルズ面においては、今週は円高要素が増えています。しかし、アメリカの指標次第では再び円安圧力が高まる可能性がありますので、特にアメリカの経済指標に要注意かなと考えています。