こんばんわ!
1/1週の展望です。
◾️ファンダメンタルズ観点の展望
・マイナス金利解除に向け、日銀内でも意見が割れている可能性がある。
・アメリカの利下げ前にマイナス金利を解除する可能性もある。
・アメリカは、債券市場が早期利下げ論を折り込み切ってしまった可能性がある。
・よって、長期金利の短期的動向としては、一層の下落より、上昇の方が可能性としては高いのかもしれない。
先週のドル円は週明けこそはレンジでしたが、植田総裁の発言(NHK番組)をきっかけに大きな下落を開始しました。しかし、先週はクリスマス、そして年末の休暇シーズンだった為、ファンダメンタルズ面においてはあまり変化が無い状況です。
日本におけるトピックは、日銀が議事要旨を出した点、そしてNHKの番組での植田総裁の発言です。
議事要旨においては、マイナス金利解除に向けた方向性への意見が若干割れていることが確認されました。たとえ来春の賃上げが予想を上回ったとしても物価にはそこまで影響しない、といった意見もありましたが、緩和と副作用のバランスをとるためにも運用を柔軟化することが適切である、といった出口戦略に向けた動きを支持する発言もありました。
※引用:NHK NEWS(画像クリックで記事にアクセス)
また、NHKの番組でのインタビューになりますが、植田総裁の発言が注目を浴びました。その内容を要約すると、完全に中小企業の賃上げデータが出揃わなくても、前もって判断(マイナス金利解除の)できる可能性がある、となります。文脈的には、データが揃えばそういった可能性もありますよ、という趣旨だったと思いますが、特に海外ではそこが切り抜かれて報道されたようです。結果的に、ドル円ベースでは2.5円程度も円高方向に動きました。
※引用:NHK NEWS(画像クリックで記事にアクセス)
ここからは個人的な憶測になりますが、日銀の基本的なスタンスとしては、最低でも来春の賃上げデータが完全に出揃う来年6~7月頃までは動きたくないのだと思われます。大企業の賃上げデータは3~4月に出揃いますが、中小企業は6~7月頃まで待つ必要があります。ストーリーとしては、2024年だけでなく、2025年のインフレ見通しにおいても2%を超える事を確認し、それを理由にデフレ脱却を宣言し、マイナス金利を解除したいのだと思われます。その為、コストプッシュ型であったとしても、物価上昇の流れが止まって欲しくないのだと思われます。
また、植田総裁が発言している通り、マイナス金利には大きなデメリットも存在します。元来、マイナス金利懐疑派と言われている植田総裁としては、マイナス金利はなるべく早く解除したいと考えている可能性が高いです。もし10年間も続いたマイナス金利から脱却するならば、2%以上の物価上昇が見られている今こそが絶好のチャンスです。
しかし、アメリカを含む多くの海外主要国が想定より早く利下げを開始するとの見方が強まってきています。もし、来春前に海外が利下げを始める場合は、海外のインフレ率も大きく低下している可能性が高いですし、加えて為替においても円高方向に大きく動く可能性があります。その場合、第二の力が強まる以前に第一の力が先に弱まりますし、次年度のインフレ率も2%を超えない可能性が高まります。果たしてその状況でマイナス金利の解除を理論的に正当化できるでしょうか?
そう考えると、海外が利下げを始めるまでにマイナス金利を解除(YCCの撤廃)しなければ、今後数年、或いは数十年間、マイナス金利を解除できなくなる可能性もあります。その結果のデメリットは計り知れない大きさになる可能性もある為、もしかすると、マイナス金利解除の最後のチャンスは春闘前になる可能性もあります。そういった可能性も検討の場に上がってきており、ここにきて日銀の中でも考え方が揺らいでいるのかもしれません。よって、個人的には1月、3月の日銀政策金利決定会合は特に要注意かなと考えています。
アメリカについては長期金利の大きな低下が目につきます。10月頃には5%付近まで上昇していましたが、そこからわずか2ヶ月足らずで3.8%まで低下しています。パウエル議長が早期利下げについて発言したことが要因になっていますが、想定以上に大きな下落になっているのではないでしょうか。一部大手メディアでは、来年3回以上の利下げがあるとも発信しており、海外では早期利下げ論が大きくなってきています。
※引用:楽天証券(画像クリックで記事にアクセス)
焦点になっているのは来春3月までのFOMCで利下げが実施されるかどうか。鍵になるのは1~2月のCPIの結果だと思われます。現在の長期金利は3.8%ですが、同水準の金利は今年の7月~8月頃でした。その時期は、ちょうどインフレが鈍化してきており、追加利上げの否定及び、利下げ時期についての憶測が出始めていました。今と背景が似ています。その時期、発表された6月、7月のCPIは、前年度比でそれぞれ3.0%、3.2%です。直近12月に発表された11月CPIは3.1%だった為、おおよそ、その頃のCPIと一致しているのかなと思います。そう考えると、下がりすぎに思える長期金利ですが、案外妥当な水準まで織り込みにいっているのかもしれません。
※引用:Investing.com(画像クリックで記事にアクセス)
また、仮に1~3月のCPIにて上振れが確認されなければ、その頃の政策金利:5.00%~5.25%まで、0.25%下げるというのも時期尚早ではないのかもしれません。勿論、そもそもの背景が違うので単純な比較はできませんし、少々乱暴な見方かもしれません。しかし、ある程度の目安にはなるのではないかと思います。(ちなみに、為替も同水準になっている)
よって、早期利下げ論についてはそこまで的外れではないと考えます。しかし、もし1~3月のCPIが上振れたり、或いは雇用統計等で市場想定以上の結果が続いた場合、ほぼ織り込み済みである早期利下げ論が否定されることになりますので、大きく長期金利が上昇する可能性もあります。また、大きく動けば収斂する動きをするのが相場なので、早期利下げ論を織り込み、既に妥当な水準まで下落してしまった長期金利は、ここから更に下落する可能性より、上昇する可能性の方が高いのかもしれません。その場合、ドル買いになり、また円安圧力に繋がる可能性もあります。よって、1月以降はアメリカ長期金利の上昇に要注意かなと考えています。
日銀の動きについては依然として不透明感がありますが、早期マイナス金利解除の可能性が出てきています。よって、マイナス金利解除についての発言が出てきた場合は円が買われる展開になりそうです。一方、アメリカは早期利下げ論をほぼ織り込んでしまった可能性があります。よって、長期金利は下落するより上昇する方が可能性が高いかもしれません。その場合はドル買い圧力及び、円売り圧力へと繋がる可能性がありそうです。